【第4回】マクロ経済学について
短期の話に入る前に、貨幣システムについて整理したいと思います。
1 貨幣とは
・貨幣:取引や決済に使用できる資産のストック
計算の単位、決済(交換)手段、価値保存手段の3機能がある
→商品貨幣:内在的価値を持った財による貨幣(例 金銀)
→不換貨幣:内在的価値を持たず、法令等で根拠づけられる貨幣(例 紙幣)
3機能を社会全体が認めてくれるかどうかが重要
・貨幣の範囲
→小切手やクレジットカード自体は貨幣ではない
・マネーサプライ 貨幣供給に近いもの(経済学的な考え方)
・貨幣の尺度
→C 現金通貨
M1 現金通貨+預金通貨
M2 現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(譲渡性預金、ゆうちょ銀行除く)
M3 現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(譲渡性預金、全金融機関)
L 広義流動性(M3+金銭信託+投資信託+金融債+社債+国債など)
・貨幣量の決まり方
→民間銀行部門による信用創造(民間銀行の与信)
→中央銀行(金融政策)による貨幣供給量の管理(公開市場操作)
2 銀行の役割
・マネーサプライ(M)=現金通貨(C)+銀行預金(D)
→ケーススタディ 100%準備制度
※準備(reserves) 銀行が受け入れられたが貸し出していない預金
100%となると、銀行が預金すべて保管し貸出しないことを示す
→M=C+D=0+1,000
M総計は1,000となり不変
→ケーススタディ 部分準備制度
預金を20%準備として保管、残りを貸し出す
・・・貸し出しを受けた人は800円の現金を保有する
→M=800+1000=1,800
M総計は1,800円に増加、これを繰り返しマネーサプライを増やしていく
・信用創造とは、預金からマネーサプライを創出すること
3 中央銀行の役割
・貨幣量の測定
→マネーストック 金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量
→マネタリーベース 中央銀行が世の中に直接的に供給するお金
・中央銀行の役割
中銀準備預金(日銀当座預金)の調整を通じて、信用創造プロセスに影響を与える
ことで、マネーサプライに影響を与えることができる
→お札の発行
→物価の安定(金融政策)
→金融システムの安定(金融機関の経営実態把握など)
・金融政策
→オペレーション(公開市場操作)で市場に出回るお金の量を調整
金融機関から資産購入(買いオペ)し、資金供給
金融機関に資産売却(売りオペ)し、資金吸収
・マネタリーベースとマネーサプライ
M=現金通貨(C)+銀行預金(D)
B=C+準備預金(R)
C/D=cr(現金・預金比率)、R/D=rr(準備・預金比率)
→M=((cr+1)/(cr+rr))×B
※((cr+1)/(cr+rr))は信用乗数(貨幣乗数)と呼ばれる
・crとrrが一定であれば、マネタリーベース拡大とマネタリーサプライ増加は正比例
・信用条数のイメージとしては、銀行のシステム(預金と貸出)によるマネーサプライを発生させることを踏まえ、銀行における預金と貸出のバランス比率のようなもの
・準備・預金率(rr)は実際のマネタリーベースにおけるマネーサプライの管理上で、預金回りが良くなると準備比率を上げることもある
・量的緩和
中央銀行がマネタリーベースの量を増やし、景気回復を目指す金融政策
→多くの先進国で採用
例)日本
信用乗数は一定である仮定の元で、マネーストックを増やすことでマネーサプライを増やす金融政策(アベノミクス)を行う
しかしマネーサプライの伸び率に対して、マネーストックは緩やかな伸び率
→信用乗数が下がっているため(一定でないため)緩やかになってしまう
例)アメリカ
2008年リーマンショック以降、準備預金を増やすことに
2020年のコロナを契機に、さらに準備預金を増やしていたが、利率上昇によりインフレ傾向にあるため近年は準備預金を減少傾向にする
日本同様に、マネーストックはマネタリーベースほど伸びない
→信用乗数の低下=預金・準備比率(rr)の上昇
・金融緩和で準備預金が増加し、預金を上回るペースで増える
・低金利であるために、銀行では超過準備を積み上げる傾向にあった
※特にアメリカはサブプライムローンを教訓に安全な貸出先に対象を絞っていた
今回は、貨幣の流れについて整理しました。マネタリーベースを増加しても、マネーサプライは思うように伸びないなど、不完全なコントロールであることが、過去の例からも分かりました。