「夕張再生市長」を読んでみました
「夕張と言えば”夕張メロン”」と多くの方は思うかもしれませんが、我々自治体職員としては、「夕張と言えば”一度破綻した自治体”」といった印象を持ちます。少子高齢化の中で迎える人口減少社会において、この夕張市という存在は地方自治体の将来図であり、学ぶべき点は多くあると思います。そんな夕張市を再生させるために立ち向かった元東京都職員の方の書籍を読みました。
1 本の情報
◆書名 夕張再生市長
◆著者 鈴木 直道
◆出版社 株式会社講談社
◆出版日 2014年10月20日初版
2 概要
(1)夕張市
・炭鉱と共に栄えた町
1960年代:人口12万人
→1981年:炭鉱ガス事故で廃坑
炭鉱会社が撤退、残った住宅や病院・水道施設を市が買取り
(1979〜1994年 計584億円投入、内332億円地方債)
・炭鉱から観光
過大投資と三セク放漫経営で巨大赤字
・人口減少
1万人程度、2010年高齢化率43.8%
(2)夕張の姿は日本の未来の姿
1000兆円超の借金、税収の落ち込み、人口の自然減少・高い高齢化率
・夕張市
職員の給与4割カット
管理職の退職と反比例する業務量(財政再建)
ボランティア精神(行政ができないなら自分たちでやるしかない)
→1番の被害者は市民、財政再建を市民生活より優先しなければならない
(内3億の借金を18年で返済する計画、計画変更は北海道と国の許可)
・新たな企画
人に来てもらう取組
(高速道路の寄り道サービス、企業誘致)
・市民との関係
相互理解の場を作る(市長・職員が出向く)
将来像を示す(何故この取組が必要か)
(3)まちづくりマスタープラン
人口減少と税収減、行政サービスの維持困難
住宅不足で定住人口が増えない
・コンパクトシティ計画
街を集約し効率的な暮らしを目指す
人口減少に対応した街づくり
(通常は人口増加の政策に集中しがち 例)選挙対策による交流人口や定住人口)
→住民は総論には賛成(次世代に繋いでいく)
しかし各論は反対(引っ越すとは何事だ)
→役所の理屈を捨てて住民の立場に立つ
→成功体験を作る
(4)自治の意味
・人口はゼロにはならない
行政サービスを維持する必要性がある
・夕張に住みたいと思える都市にする
→高齢が多いから優先するだけではなく、子どものことを考える
(人口減で行政サービス低下すると、高齢者も住みにくくなる)
→2013年10月〜:乳幼児の医療費無料化、職員待遇の改善
(5)新たな可能性
・次世代エネルギー(CBM)
炭鉱の特徴
・廃坑の再活用
・夕張メロンブランド戦略
・企業誘致
・公共交通(DMV)、線路道路を走る
3 感想
地方自治体の根幹は「人口」であると改めて実感しました。人口が減らないように地方自治体は努力すべきであり、人口が減らなければ税収は減らず行政サービスも安定するため更なる人口の呼び水になると思います。また、必要な視点は持続可能性であることも分かりました。目先を見るのであれば増えている高齢者政策ですが、先を見るためには少子化対策が必要となります。この両者を天秤に掛けて政策を遂行することが、その都市の持続に寄与することを踏まえ、働いてみようと感じました。