「こうして流山市は人口増を実現している」を読みました
1 流山市とは
流山市をご存知の方も多いと思います。今はテレビやネットでも話題の流山市は、千葉県にある東京のベッドタウンですが、近年子育て世代の人口流入が多く人口増の地域となっています。日本全体では人口減少が進む中、どのような戦略で人口増を実現しているのか。地方自治体は、流山市に学ぶべきところは多くあると思います。
2 本について
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書 名 こうして流山市は人口増を実現している
著 者 淡路 富男
出版社 株式会社 同友館
発行日 2018年10月15日
3 概要
(1)人口減少時代を生き抜く4条件
1991年以降、流山市は人口減少と地域経済の低迷・少子高齢化・財政逼迫
→”子育てに優しい街が伸びる街”
2027年以降も人口減少しない、そして人口減少しにくい街を創る
①母都市への交通利便性
・東京の衛生都市として、東京のエネルギーを取り込む
→TX、バス路線整備
②良質な住環境とその指標向上
・不動産市場での価値指標として、量より質にこだわった街
・緑の景観(グリーン認証制度、景観条例、街づくり条例)
→転入者の2/3は流山市を第一候補として選択
→担税力のある住民の転入増
③快適な都市環境とその創出
・子育てに優しい街が伸びる街、子どものそばで働ける街が伸びる街
→保育所整備、駅前送迎保育ステーション、サテライトオフィスなど
④ブランディング戦略
・対象者を「未認知層」〜「愛着プライド層(アンバサダー)」の7段階に
⇨「人口の減りにくい街づくり」を進めていく戦略
(2)人口構造の変化
・長寿傾向の強まり
・40〜49歳代「働き世代」の人口が最も増え1.71倍に
・30〜39歳代「子育て世代」の人口は1.29倍に
・10歳未満の「子ども世代」の人口は1.49倍に
⇨合計特殊出生率1.57(全国平均1.44)
・TX(つくばエクスプレス)停車都市との比較
基礎期:無駄の削減(最小で最大の利益)
成長期:ヒット政策(駅前送迎保育ステーション)
(3)ニーズの把握
①流山市転入者アンケート
→転入者の69%は県外
→東京、茨城、埼玉など隣接自治体からの移住が多い(37%)
⇨対象の細分化(セグメンテーション)
→通勤と通学の利便性、仕事の都合が理由として多い
→物件、気に入った住環境の良さ、地縁血縁が上位
⇨対象の選定(ターゲッティング)・・・子育て世代
②交流人口を増やし、街の良さを知ってもらう
→市民の増加→企業の進出→雇用の増加
③顕在ニーズと潜在ニーズ
・顕在ニーズによる評価、潜在ニーズで探る将来市民
→各政策の向上→住み心地の向上→愛着意識の向上→定住意識の向上
(4)その他
・都市ランキングでの評価
財政力の推移:市税収入の増加、扶助費の増加(成長に伴う費用)
市債残高の増加(施設活用による市民活力の向上)
・人口減の真因
「原因」:人口増を誘導できない政策、公共サービスの不適
「真因」:原因をもたらした組織体制のあり方や能力
→トップダウンからミドルアップへ移行
→ボトムアップの改善案
⇨共働き子育て世代を中心に人口を増やす
4 所感
流山市が取り組んだことは、「子育て世代に特化した政策」であるように見える一方で、子育て世代の人口流入により担税力のある市民が増え、市税収入が増えることで高齢者世代にも投資できる税源が増えるといった、多世代にWin -Winとなるものであると実感しました。その一方で、こういった一見「特定の世代に特化」した政策は、なかなか広く市民の同意を得られないのが現状です。
いかにして市民に「我が町を良くしたい」という当事者意識を芽生えさせるか、そして市民と一緒に街づくりを進めていけるかが重要となります。その意味では、行政としては”シビックプライドの醸成”と”持続可能な都市に必要となる人口層の確保”を両天秤に、政策を進めていくことが必要であると思いました。