【第6回】マクロ経済学(経済成長)について
今回は経済成長について整理していきます。今までは長期における市場を前提に考えてきましたが、今回は潜在成長力が経済成長となる超長期をベースにしていきます。
1 ソローモデル
資本や労働が時間的に変化した時、GDPはどのように変化し成長して行くのか
・ソローモデル
資本蓄積による経済成長に焦点
→動学:労働及び資本の量が変化し、算出量も変化する
→実物モデル:価格変数は明示的には現れない
(需給均衡のため柔軟的に動く仮定)
→閉鎖経済:単純化のため、海外部門及び政府部門は含まない
・生産関数 Y=F(K.L)
労働者一人あたりに注目すると、一人当たり生産は一人当たりストックに依存
→資本の限界生産力(MPK)は逓減
・支出面のGDP:Y=C+I+G
長期同様、超長期でも政府支出は影響がないためゼロ
所得の一定割合を貯蓄(s)し、残りを消費(1–s)に回す
→貯蓄(sy)、消費(c)=(1-s)y
→均衡では、投資(i)と貯蓄(s)は一致 → i=sy
・資本ストックの蓄積
投資:新しい資本(機械や工場)を作るための支出
減価償却:現在ある資本がなくなって行くこと
→資本ストックの変化(Δk)=投資(i)−減価償却(δk)
※δ:減価償却率(資本ストックの内、毎期消失していく部分の割合)
・資本ストックは、投資から減価償却を引いたもの
→投資>減価償却:資本ストックは増える
→投資<減価償却:資本ストックは減る
定常状態を目指して資本が増えるので、経済成長していくロジックとなる
=経済の長期均衡を表す
例)WWⅡ後の日本
国富は大量に減った(特に船)ため資本ストックが著しく減少
=その後の経済成長が著しく見える
・ソローモデルで貯蓄率が上昇すると、
→投資が上昇し、資本ストックは新しい定常状態に向けて増加していく
・ソローモデルにおける「資本の黄金率水準」
→定常状態は貯蓄率によって異なる
しかし、貯蓄率が100%になると消費はゼロとなってしまう
→消費を最大にする貯蓄率が最適(所得より消費が国民厚生を高める)
=「資本の黄金率水準(ゴールデンルール)」
・消費最大化の条件
→生産関数と減価償却関数の傾きが同じ(MPK=δ)
・ソローモデルにおける持続的経済成長の要因
→一人当たりの所得(y)は、定常状態に到達すると成長は止まる
→貯蓄率上昇は、定常状態のyを増加させ当初は成長率も加速するが、
新たな定常状態に達すると成長は止まる
・持続的経済成長の要因:人口
人口と労働者が一定率で成長すると想定
労働者一人当たりの資本ストックや所得は、労働者が増加すると減少
定常状態では一人当たり生産(y)や資本(k)は一定
→総生産(Y)、総資本(K)が人口増加率の分増加
→人口増加率が高い国は、一人当たりの所得が低い
・持続的経済成長の要因:技術進歩
生産関数(Y=F(K,L))を拡張 → Y=F(K,L×E)
※E:労働の効率性、L×E:有効労働者
労働者が増えなくとも、労働の効率性が上がれば実質労働者が増えたと同効果
→技術進歩を含むモデルの定常状態
・有効労働者一人当たりの資本ストックは一定
・有効労働者一人当たりの生産は一定
・労働者一人当たりの生産は、増加率(g)で増加
・総生産(Y)は増加率(n)+g(人口増加率+技術革新)で増加
→一人当たり所得の持続的な成長は技術進歩のみでもたらされる
・ソローモデルによる所得水準の収束
一人当たり所得(y)は定常状態に収束、スピードは定常状態からの距離に比例
→無条件収束
現実的には条件付き収束
→人口成長率、貯蓄率、教育の達成度などが国によって違う
2 潜在成長率
・潜在成長率:現在の経済構造を前提にした一国経済の供給力
(中長期的に持続可能な経済の成長軌道)
→前提となるデータや推計方法で結果が大きく異なる
ソローモデルは重要な視点ですね。いよいよ、次回からは短期について整理したいと思います。