2児のパパによる「日常を楽しむ情報」ブログ

今日もお疲れ様です。ここでは、2児(6歳/3歳)の子育て中の30代パパが、「日常を楽しみながら過ごす」ことをモットーとしたブログです。”子育て・仕事”に役立つ情報を、週3回(月・水・金)で発信します。

記憶のストックをフローにする

1 きっかけ

 大学院の講義の中には、外部講師を招いて講義するタイプもあります。それらの多くは、日本だけでなく世界的な先進事例を紹介していただくもので、大変有意義な時間です。今回は、その講義の1つで印象的であった「デジタルアーカイブ」をご紹介します。

 

2 デジタルアーカイブ

 みなさんは、「デジタルアーカイブ」という言葉をご存知でしょうか。私はこの講義を受けるまでは、聞いたことがある程度でした。この言葉は造語で、「アーカイブ」(価値がある資料を記録し保存すること)をデジタル化することで、つまりはデジタル技術によって資料の保存や閲覧などを可能にすることです。既に多くの図書館などでは、図書情報はデジタル化されて、誰もがインターネット上で検索し情報収集できるようになりました。「デジタルアーカイブ」は図書に限らず、幅広く活用されています。

 今回の講義では、記憶や記録のデジタル化という題材でした。

 講師の方は、「ヒロシマアーカイブ」などを運営している方でした。広島と長崎に原子爆弾が投下され、その体験をした人たちの話をデジタルアーカイブにしています。従来は、体験者の話はデジタル化されていてもデータベースに載せるのみで、その体験者が体験時にどの辺りにいたのかは、聞いた側は理解し辛いものでした。また、データベースでは時系列順になることが多く、「ここではこの体験だけど、少しズレたこの場所ではどのような体験なのか」を俯瞰してみることも難しいです。

 その問題に対し、「ヒロシマアーカイブ」は現在と未来を重ねることで体験をリアルに捉えることが可能になっています。デジタル地図上に体験者が体験場所をポイントし、またその地図が現代地図と比較できるようになっているため、「今のこの場所でこの方が体験した」ということがリアルに感じられます。「ナガサキアーカイブ」も同様に、情報を立体視することが可能です。また両者を比較すると、広島が当時晴れていたため同心円上に被害が出る場所に投下されていること、長崎は当初の投下予定地である福岡県小倉が曇っていたために予定変更された場所で、かつ雲の切れ間で投下したため山間部に投下し縦に長く被害が広がっているなどが見て取れます。

 

3 活動の視点

 「ヒロシマアーカイブ」の取組は、被害地となった女学院の今の生徒たちが中心となって行われています。生徒が体験者にインタビューすることで、生徒の育成にもつながっているそうです。また、体験者も地元記者やメディアに体験談を話すときよりも、自分の母校生徒や地元女学院の子が話を聞いてくれると嬉しそうに体験談を話すそうです。この「記憶のコミュニティ」が形成されることで活動が後世にも継がれていくこと、またインタビューを通して学生たちの記憶に強く残り、後に新聞記者や大人になっても活動に携わる方もいるそうです。

 

4 リブーティングメモリ

 また、AIを使った白黒写真への色つけも印象的でした。これらは「リブーティングメモリ」(記憶の解凍)と呼ばれ、昔と今を繋ぐことで今の出来事のように感じることができます。例示で見せていただいたアンネフランクのカラー化は、まるで今を生きる普通の少女のように感じられ、そのような少女までも被害者となった戦争の凄惨さを見にしみて感じました。

 

5 現代の記憶を継ないでいく

 現在も続くウクライナ戦争も、記憶として後世に継ないでいく重要な出来事です。この戦争では既に、米企業「マクサー・テクノロジーズ」により衛星画像をSNSで発信されて、誰もがその凄惨な現場を俯瞰してみることができます。これらは初めからストックされずフロー化されておりますが、激流の中で情報が発信されているため、「最初に被害を受けたウクライナの地域はどこだったか」など過去の出来事が忘れ去られようとしています。そこで大事となるストックする作業を行うため、ウクライナ衛星画像マップによって、衛星画像をデジタルマップに載せることで人々が見ていなかった所で何が起きていたかを明らかにしてるそうです。例えば、ロシア軍が侵攻してきた時には、ウクライナ近隣都市へ避難する渋滞が発生していたのが、ロシア軍の徴兵が始まると今度はロシアから近隣としへ避難する渋滞が発生しているなどが、衛星画像では明らかになっています。また、このデジタルマップには人工衛星画像では残せない記録、つまりウクライナに残った市民などが記録した画像も掲載されており、より現場の状況がわかるようになっています。

 現代で起きたことを後世に正しく伝えていく。そしてそのサイクルを継続していく仕組み作りは非常に重要であると感じています。この取組が負の遺産だけではなく、広く一般的に活用されるよう地方自治体でも積極的に取り組んで良いのではと思いました。