2児のパパによる「日常を楽しむ情報」ブログ

今日もお疲れ様です。ここでは、2児(6歳/3歳)の子育て中の30代パパが、「日常を楽しみながら過ごす」ことをモットーとしたブログです。”子育て・仕事”に役立つ情報を、週3回(月・水・金)で発信します。

「一番やさしい自治体財政の本」をご紹介

1 読んでみようと思ったきっかけ

 私は市職員として働き始めて8年目になりますが、恥ずかしながら地方行政の法体系については、ほとんど知らずに過ごしてきました。というのも、入庁して3年間は生活保護関係、異動してから4年間は観光振興について取り組んできたので、あまり意識せずきました。

 大学院に入ると、地方行政として重要となる行政学を中心に様々な学問を学んでいます。その多くは公務員試験で学んだものになるため、完全に初見ではないですが、やはり公務員になってから改めて学ぶと、実務との関わりが見えてきます。その中で、特にこれからの公務員人生で重要になると感じたものの1つが「地方財政」です。

 地方財政地方自治体の予算編成に関わるもので、公務員にとっても重要なもので、す。私の自治体でも、ただ、今まで財政分野に触れてこなかった私にとっては掴みづらい内容で、理解するのに苦労しました。「初心者向けに全体像だけでも分かるものは無いかな」と思っていたところ、この本に出会いました。

 

2 本の基本情報

◆書名  一番やさしい自治体財政の本
◆著者  小坂 紀一郎
◆出版社 学陽書房
◆出版日 2022年2月17日

 

 この本では地方財政における基本的な用語を理解することができました。ざっとご紹介します。

 

3 概要 

【第1章】

 社会には以下のような市場があります。

  ・市場部門  お金と引き換えにサービスを提供

  ・共同体部門 お金とは関係のない精神的支え

  ・公共部門  公共サービス(警察や消防など)を提供

 公共サービスを担うのは地方公共団体です。地方公共団体における事務配分は、地方自治法に基づいています。考え方としては、国民に近く行政サービスを提供するのは地方公共団体なので、「市町村優先の原則」が効いています。

 市には以下の種類があります。

  ・指定都市 人口50万人以上、現在20都市

  ・特別市  人口20万人以上、現在48都市

 町村は名称こそ違えど事務分担上は同じ扱いです。

 特別区は特殊で、上下水道や消防などの広域行政は東京都が、それ以外は市町村と同じ役割を特別区が担います。

 では、その行政サービスを担う公務員の数はというと、国家公務員が約58万人いる一方で、地方公務員は約274万人います。それだけ地方自治体が担う行政は多いのです。

 行政サービスに要する地方税収入は歳入の3割程度です。そのことから「3割自治」などと呼ばれることもあります。国税は6割程度になりますが、国から地方へその6割を配分しています。

 地方での収入源となるものとしては、何か公共施設を使用したときの”使用料”や、粗大ゴミを廃棄する際の”手数料”などになります。これら受益者負担の財源は、地方自治体の財政を支える重要な収益となっています。

 それらの予算の使い方としては、以下の2つに分かれます。

  ・目的別 民生費、教育費、土木費が多くを占める

  ・性質別 人件費が圧倒的に多い、扶助費と公債費が後に続く

 

【第2章】

 税にも以下のように性質別に分けられます。

  ・直接税 納税者と負担者が同一

  ・間接税 納税者と負担者が別々 → 税金が消費者に転嫁される

 また、税金には以下の種類があります。

  国税  所得税法人税、消費税が全体の8割以上を占める

  地方税 都道府県税:都道府県と事業税合わせて6割以上を占める

       市町村税:固定資産税と市町村税で9割以上を占める

 地方税は、受益者負担が明確であり税収が安定、また全国共通なものです。

 また、地方税自治体による課税が原則ですが、課税するかどうかは自由としています。例えば、「核燃料税」などの法定外税はある自治体とない自治体が存在します。

 

【第3章】

 税について基本的なものを学んだ上で、自治体の行政サービスで地方税で足りない部分はどのように賄うのかが重要となります。

 地方交付税は、国から地方自治体へ配分するお金です。自治体の財政力の違いを調整し、地方財政計画によって支出を判断します。地方交付税の中身は”普通交付税”(全体の94%)と”特別交付税”(6%、大きな災害があった地域などに配分)に分けられます。

 では、自治体の財源不足がくはどのように計算されるのか。ざっくり言うと「基準財政需要額−基準財政収入額」で計算されます。

  基準財政需要額 必要経費を測定基準を使って計算+地域差

           ※測定基準とは、標準団体に基づく単位費用

           →測定単位の数値×補正係数×単位費用

  ・基準財政収入額 前年度実績や国税推計など客観的な統計資料で計算

           内、25%は留保財源として自治体の独自行政サービスに充てる

 つまり、「需要-収入」です。当然、収入が上回れば交付はありません。東京都などが該当し、そのような自治体を”不交付団体”といいます。反対に交付される自治体は”交付団体”といいます

 不交付団体は少なく、ほとんどの自治体が交付団体です。それだけ地方交付税に依存しており、国への依存度は地方自治の弊害問題とも言えます。

 国として重要とする自治体業務などは、国庫負担金として国が経費の一部を負担しています。例えば、義務教育職員給与や生活保護費、建設事業費などがそうです。また、国会議員の選挙や国勢調査など本来国が行うべき業務を便宜上自治体が行う際にも、「国庫委託金」として支出されます。

 これらの支出傾向としては、社会保障経費での支出が自治体の中で多いため、国庫負担金が国庫が地方自治体へ支出する総額の8割を占めています。

 また、国からの補助が手厚すぎると地方自治の弊害になるとも考えられます。補助金の交付条件に縛られ、地域課題を自分の頭で考えないような自治体も増えています。それは本来の地方自治の本旨とかけ離れた創造性の欠如です。

 

【第4章】

 自治体の財源は大きく2種類あります。

  一般財源 使い道が自由(地方税地方交付税地方譲与税など)

  特定財源 使い道が限定(国庫補助金、地方債など)

 地方債とは、自治体の借金で得る収入で建設事業債が最も一般的です。発想としては、世代間の負担を公平化し、今後の経済発展で返済するというものです。借用期間は10年、3年間据え置きで利子のみ支払いをするものが多いです。

 自治体の予算については3つの原則があります。

  ・会計年度独立の原則 1つの年度で歳出、歳入を決着

  ・総計予算主義の原則 収入や経費を全て予算に載せる(住民への情報公開)

  ・事前議決の原則   議会の議決を経る

 予算は大きく”款・項・目・節”で分かれます。「市税・市民税・個人・現年課税分」といったイメージです。予算要求は国も自治体も8月頃より始めて行きます。自治体では、財政当局が定める予算編成方針に従って要求書類を作成します。その後は、

  ・10月〜12月 ヒアリング

  ・2月     予算査定

  ・3月     議会へ予算案を提出(当初予算)

 といった流れです。その他にも、地方交付税や国庫補助金の具体的な金額が分かった際に予算を組むなどするため、「補正予算」と呼ばれるものも議会月に行われます。補正予算は9月に行われることが一般的です。予算の処理は年度を跨いでくる収入もあるため、4月〜5月の出納整理期間に処理し、その後に決算処理を行います。

 そもそも自治体の予算は「量入制出」と呼ばれ、家計と同じく入ってくる収入の中でやり繰りします。主な収入は以下の通りです。

  ・住民税   個人住民税と法人住民税(3.5対1の割合)

  ・固定資産税 土地と家屋が各40%、残りの20%は償却資産

  地方交付税 基準財政収入額によるが、その見込みは難しい(企業業績に左右)

  ・地方債   買入目的が重要、現在高(未返済分)に注目

  ・繰入金   財政調整基金繰入金が自治体の基本姿勢を表す

         ※自治体の自由裁量

          潤沢な自治体は当初予算で固くしておいて不足分を充てがう

 

 総合的に注目すべきは、前年度からの伸び率です。その中で、計画通り事業は進行できているか、公共施設等も作ることに手一杯で維持費の負担が増えていないかを見ていく必要があります。

 しかし、そこには表に出づらい”ブラックボックス”が存在もしています。「委託料」や「補助金」、「負担金」がその代表例です。中身が不明瞭で既得権化しているものも多く、その効果は不明になっています。住民もその代表である議員も、増やすことに主張が偏りがちですが、減らすことも重要です。

 決算は他の地方自治体と比較できる「決算カード」と呼ばれるものがあります。気になる自治体があれば誰でも比較して、どちらの自治体がより財政力があるか分かります。

 

4 所感

 まとめきれず恐縮ですが、ぜひこの本は地方公務員には読んでほしいと思います。地方財政の知識がないまま地方行政に携わっている行政職員は多くいると思います。私自身も、大学院で学ぶ前は基本的な知識がないまま漠然と予算要求や決算処理をしていましたが、今思うと「自治体という大きな会社の運営についての視点なく政策立案していたな」や「自治体の一般財源の負担を気にせず予算積算していたな」と感じています。

 この手の学問は初心者には入りづらいですが、この本は初心者向けに分かりやすく解説してくれてました。参考になりますと幸いです。