「観光ブランドの教科書」をご紹介
今は大学院に派遣されている私ですが、その前までは長らく観光の部署にいました。「観光が強くない地方自治体で観光を盛り上げるには、どうしたらよいのだろうか...」当時はそんな事を思いながら、初めはルーティンワークのみこなしていたことを思い出します。
そんな中、他都市の観光部署と話す機会があり、その際に彼らが”観光”について地域ブランドを語ることに刺激され、「そもそも観光というブランドについて知識がない」ということを実感し、この本を手に取りました。
読んだのは随分前になりますので、当時のメモを見ながら改めて勉強する気持ちでご紹介します。
1 基本情報
◆書名 観光ブランドの教科書
◆著者 岩崎 邦彦
◆出版社 日本経済新聞出版社
◆出版日 2019年11月6日
2 概要
◆引力がある地域=「来てください」という誘客キャンペーン
例)そうだ 京都、行こう。
・”地域引力”(原因)→”観光客”(結果)
◆観光施策の目的
・地域が元気になること、住民が幸せになること
→地域引力の創造:農業×工業×商業×...
・”量”のインバウンドより”質”のインバウンド
◆「押す」ではなく「引きつける」
・観光客を主語に考える
・観光客は価値を求めている(地域<宿泊先での五感で感じる体験)
→地域に求めるもの=「リラックス」(”モノ”観光ではなく、”コト”観光)
⇒リピートビジネスへつながっていく
◆地名とブランド
例)栃木県<日光、長野県<軽井沢
◆観光地が持つ9つの因子
明確なイメージ、歴史文化、リラックス、ならでなの食、低コスト、
交流、接客、自然、体験
⇒「地域コンセプト」や「地域イメージらしさ」が重要
例)名物料理など 地域の名前を聞いてイメージがわくもの
※知名度≠ブランド、イメージがわく=ブランド
◆成功事例から考え方を学ぶ
①「磨く」
・顧客にとっての強み(非日常)
→引き算で地域引力を見つけ出し、掛け算でナンバーワンになる
例)温泉と日本猿
・シンボルを作る
→観光客目線となり、自分がそこにいるイメージを作る
例)MICE:その地域ならではの食体験に魅力を感じる
→食のブランド作り=食べる”コト”観光を作っていく
②ブランド作り
・ベクトル合わせ:「ブランドとは何か」のイメージをすり合わせる
・現状分析:観光客視点での分析
→ブランドアイデンティティを形成(独自性×共感性×価値性)
・ブランド戦略の実行:例)WEB、ポスター、パンフレット
→統一感を持つ(そのブランドが持つアイデンティティのイメージ)
→一貫性を持つ
・ブランドの評価、モニタリング
・磨き上げ
◆観光される国<観光する国
・幸福度が高い
・真の観光立国=観光を楽しむ国民が多い&海外からの観光が多い
◆質の観光
・滞在時間の増加=地元消費の増加
◆持続可能な観光
・「顧客」の循環=滞在促進
・「お金」の循環=地元消費、引力のある企業創出
⇒”リピート志向”、”滞在志向”につながっていく
3 所感
自分たちが旅行先を選ぶ際、無意識に使う”視点”が、観光業を営む側にも必要なことが改めて分かりました。何もない所から新たに作り出すのではなく、既にある資源を”磨き上げ”、そして互いに”掛け合わせる”などにより「独自性」を作っていく...
この作業こそ観光ブランド戦略に必要であり、官民連携での取り組みに適してると思いました。
ぜひ、皆さんも機会があれば読んでみてください。観光客視点でも楽しめる内容だと思います。