【第1回】マクロ経済学について
1 経済学の印象
経済学に出会ったのは公務員試験の時でした。経済学のような学問は試験において選択科目であることが多く、私も試験の時には「選択できる科目を少しでも増やしておこう」という気持ちで勉強していました。そのため、暗記して覚えることに注力し過ぎて、言葉や式の意味は何となく分かるんだけど、どう実生活と結びつくのかよく分からないと言うのが本音でした。
2 興味を持ち始めるきっかけ
そのまま公務員となりましたが、普段の業務でも意識せずに十分仕事はできました。仕事の進め方にも慣れ始めた8年目に大学院へ派遣されることになりました。必修科目は地方公務員に必要な行政学や地方自治関係が多い中、選択科目をどうしようかなと悩んでいた時に、「経済学」が目に留まりました。「最近ニュースでよく”財政政策”や”金融政策”と聞くけど、その違いは何だろうか。」、「物価が上がるが給与が上がらない今の日本では、どのような政策が必要なのだろうか」と普段何となく感じている疑問が少し解けるのでは、と思い受講しました。
春にミクロ経済学を学び、秋の現在はマクロ経済学を学んでいますが、ようやっと互いの結びつきが生まれて全体像が見えてきたと感じています。類似用語が多く、また理解し辛い部分がありますが、ここでは私の中の整理を含めてまとめたいと思います。
3 【第1回】マクロ経済学の概要
(1)概要
・マクロ経済学の対象
→マクロ(つまり全体)としてみた経済の動向
例)経済成長率、インフレ、デフレ、失業率、経済収支、財政収支
・マクロ経済学の役割
→マクロ経済の動きのメカニズムを解明や、現実の経済状況を把握
→適切な経済政策を実施し、生活水準や幸福度に貢献
・タイムスパンで捉える
→短期:賃金や物価は硬直的
価格による供給や需要量の調整が不十分で、経済の潜在力を実現しない
→長期:賃金や物価は柔軟で、価格による供給や需要量の調整が完全
社会にある労働と資本を全て使用し潜在成長力を実現
→超長期:労働や資本、技術水準ともに成長
潜在成長力そのものが成長
・最も単純な経済モデル(需要と供給)
需要は価格が下がれば増え、供給は価格が上がれば増える
需要と供給が一致する部分(均衡点)で価格と数量が決定
→モデルの中で決まる価格と数量を「内生変数」と呼ぶ
→所得など、モデルの外で決まる「外生変数」もある(所得増→需要増)
外生変数が変化すると、内生変数も変化する
・考え方の変遷
全ての状況を説明できる万能なモデルはない。その場その状況に応じて構築。
→アダム・スミス「古典派経済学」 神の見えざる手
市場経済で各人が各々の利益を追求すれば、社会全体で適切な資源配分がされる
→1930年頃の世界恐慌により、市場に任せて良いのかと懐疑的に
→ケインズ経済学
政府は積極的に市場介入をすべきである
・「新古典派総合」
価格の硬直性に着目
ケインズ経済学は短期、古典派経済学は長期の経済状況を表すもの
完全雇用が達成された際には、古典派経済学が真価を発揮する
・「長期」と「短期」
市場経済の基本は、需要と供給が一致するよう価格が変動
しかし現実は、価格が需要を一致させるよう速やかに動くとは限らない
→「長期」と「短期」で区別する必要性がある
長期:価格が柔軟に動き需給が一致(賃金も調整され失業等はない)
短期:価格の受給調整が不十分により不一致(失業や有休設備などがある)
・1970年代のスタグフレーション(インフレと景気後退)
ケインズ経済学を批判
・ルーカスの批判
企業や家計が政策を予想する場合、政策は効果がない
→ミクロ的な基礎に基づいた「新しい古典派」経済学を発展させる
→ケインズ経済学にミクロ的基礎を与えるモデルへ発展(ニューケインジアン)
・現時点での両者の共通点
→GDPの長期的な水準(潜在GDP)は資本蓄積、労働力、生産技術で決まる
→不況に陥った時、財政政策や金融政策などのマクロ経済政策によって
総需要を刺激し、景気回復を図ることは可能
→マクロ経済政策は潜在GDP自体を増加させることはできない
そのことを理解しないと、過剰な政策によって激しいインフレが発生する
マクロの基本的な内容を理解した上で、次回はGDPについて整理したいと思います。